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漬物屋で考えるべきHACCPとは

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漬物のなかでも加熱工程のない浅漬けやキムチは、過去に死者を伴う大規模な食中毒が繰り返し起きてきた食品です。2021年6月には漬物製造業が営業許可の必要な業種となり、経過措置も2024年5月末で終了しました。ここでは、漬物屋・漬物製造業者が押さえておきたいHACCPの考え方について分かりやすく解説しています。

漬物製造におけるHACCPとは

2024年6月から漬物製造は「営業許可」が前提に

食品衛生法の改正により、2021年6月1日から漬物製造業が営業許可の必要な業種に追加されました。改正前から営業していた事業者には3年間の経過措置が設けられていましたが、その期間は2024年5月31日で終了しています。以降は、自治体の条例で定める施設基準を満たした許可施設でなければ、販売を目的とした漬物を製造できません。

同時に、長く運用されてきた「漬物の衛生規範」(昭和56年環食第214号)は2021年6月1日付で廃止されました。個別の衛生規範に代えて、すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められる形へ整理されたためです。漬物屋にとってHACCPは「取り組んだほうがよいもの」ではなく、営業許可と一体で求められる前提条件になっています

加熱工程のない浅漬けは「洗浄・殺菌」が重要管理点

漬物は大きく、包装後に加熱殺菌する漬物(たくあん漬、醤油漬、味噌漬・麹漬など)と、加熱殺菌しない漬物(調味浅漬、キムチ、梅漬・梅干、奈良漬など)に分けられます。前者は加熱の温度と時間を管理することで菌を減らせますが、浅漬けやキムチには菌を死滅させる工程がありません

そのため小規模事業者向けの手引書では、浅漬け・キムチの重要管理点を「洗浄・殺菌は適正に行われたか」と「金属検出機は正常か」に置いています。原材料の野菜については次亜塩素酸ナトリウム溶液(100mg/Lで10分間、または200mg/Lで5分間の浸漬)などによる殺菌が示されており、そのうえで原材料から製品まで10℃以下の低温で管理する流れです。

注意したいのは、この殺菌が「濃度を測って初めて成立する」という点です。次亜塩素酸ナトリウムは野菜に付着した有機物と反応して有効塩素濃度が下がるため、目分量で入れたまま使い続けると効果が落ちていきます。試験紙などで濃度を確認し、その結果を記録するところまでが一連の管理だと考えましょう。

低塩分・低pHでもO157は生き残る

「塩や酸で漬けてあるから菌は増えない」というイメージは、浅漬けには当てはまりません。浅漬けの標準的な条件はpH5~6・食塩濃度1~2%程度で、この範囲では腸管出血性大腸菌O157が増殖できることが分かっています。2001年に発生した和風キムチによる事例でも、塩分2.3~2.8%、pH4.9~5.5という条件下で感染が広がりました。

農研機構の試験では、白菜漬けに混入させたO157の菌数は10℃・7日間の保存前後でほとんど変化せず、日持ち向上剤の使用有無や初発pHの違いによる差も見られなかったと報告されています。また、次亜塩素酸ナトリウム処理(100mg/L・10分間)で減らせる菌数は1~2桁程度にとどまるとされ、表面殺菌だけで安全性を担保するのは難しいと指摘されています。原料野菜の受け入れ段階から農業生産工程管理(GAP)の遵守を確認し、加工工程の一般衛生管理を徹底することが前提になります。

温度についても、4℃・10℃保存では増殖が見られない一方、25℃では増殖が確認されています。原材料の受け入れから漬け込み、保管、出荷までの低温管理を途切れさせないことが、浅漬けの衛生管理の土台です。

漬物での食中毒リスク

漬物による食中毒は、起きたときの被害が大きくなりやすいのが特徴です。加熱せずそのまま食べる食品であり、高齢者施設や保育の現場など、抵抗力の弱い人が食べる場面に流通するケースも少なくないためです。ここでは、実際に起こった漬物の食中毒事例を確認します。

白菜の浅漬けによるO157集団食中毒【2012年・北海道】

2012年8月、札幌市や北海道内の高齢者施設などで、漬物製造施設が製造した「白菜きりづけ」を原因とする腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒が発生しました。施設と流通先を合わせて患者169名、うち8名が亡くなるという大規模な被害となっています。

厚生労働省の資料では、製造施設の問題点として次の点が挙げられています。

・殺菌用の次亜塩素酸ナトリウムを目分量で調整し、塩素濃度の測定や追加を行っていなかった
・汚染区域と非汚染区域の区分が不十分で、殺菌前の野菜を触った手で殺菌後の野菜を扱っていた
・漬樽を洗剤や次亜塩素酸ナトリウムを使わず、床に倒して水洗いのみで済ませていた

冷蔵庫の温度自体は適切に保たれていましたが、洗浄・殺菌と交差汚染の防止が機能していなかったため、低温管理だけでは被害を防ぎきれませんでした

キュウリの浅漬けによるO157食中毒【2002年・福岡市】

2002年6月21日から7月6日にかけて福岡市で、キュウリの浅漬けを原因とするO157の食中毒が発生し、112名の感染が確認されました。有症者のうち20名が入院し、11名が溶血性尿毒症症候群(HUS)、6名が脳症を発症しています。園児からの二次感染も12名報告されました。

年齢別の感染率は0歳児で18.2%、5歳児で84.4%と喫食量に比例する傾向が見られており、子どもが多く利用する施設へ納品する際のリスクの高さを示す事例です。

カブの浅漬けによるO157食中毒【2000年・埼玉県】

2000年6月、埼玉県内の老人保健施設でカブの浅漬けを原因とするO157食中毒が発生し、7名が発症、うち3名が亡くなりました。原因としては、カブの洗浄に使用した電解水の遊離塩素濃度が低下していたことが指摘されています。

「殺菌しているつもりだったが、殺菌力が足りていなかった」という構図は2012年の事例とも共通しており、濃度の確認とその記録が繰り返し課題になっていることが分かります。

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記録や管理をできるだけ楽にしたいなら

漬物、とくに浅漬けの衛生管理は、記録すべき項目が細かく分かれます。原材料の受け入れ、洗浄・殺菌液の濃度と浸漬時間、漬け込み液の交換、冷蔵庫や作業室の温度、器具の洗浄消毒、従事者の健康状態など、手引書でも原料受入表・温度チェック表・洗浄殺菌記録・一般衛生管理実施記録表といった帳票が示されています。

過去の事例で問題になった「濃度を測っていなかった」「洗浄が不十分だった」は、いずれも記録を付ける習慣があれば早い段階で気付ける項目です。とはいえ、これらを紙の帳票で運用すると記入・回収・保管の手間が積み上がり、書き漏れが起きても後から気付きにくくなります。営業許可の更新や保健所の立入検査で過去の記録を探すのにも時間がかかるでしょう。

HACCPシステムを導入すると、衛生管理計画に沿ったチェック項目をスマートフォンやタブレットから入力でき、温度センサーと連携して記録を自動で残せる製品もあります。基準を外れた値が入力された際にアラートで知らせる機能を備えたものもあり、異常への気付きが早くなることが期待できます。記録が電子的に残っていれば、万が一の際に衛生管理の状況を示す資料としても活用しやすくなるでしょう。

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