公開日: |更新日:
HACCPの衛生教育
HACCPに沿った衛生管理を事業所に定着させるには、従業員に対する衛生教育が大切です。衛生教育の項目は、手洗い、食品衛生5S、二次汚染、異物混入など多岐にわたります。ここでは、HACCPにもとづく衛生教育について解説します。
衛生教育とは
衛生教育は食中毒の防止、異物混入の防止など、食の安全・安心を守るために、事業所でできる衛生管理を従業員に教育することです。
新人からHACCPの重要管理点の担当者まで、事業所の食品衛生に関する知識や技術を習得させ、身についているか確認します。衛生教育はフードビジネスのベースであり、食品事業者においては必須です。
食品衛生教育の種類と内容
衛生教育には手洗い・食品衛生5S・防虫防鼠・二次汚染などの項目があります。
- 手洗い:食品衛生の基本であり、衛生的な手洗い方法などを教育します。
- 食品衛生5S:整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つを指します。整理・整頓・清掃をして微生物レベルの清潔さを保ちます。
- 防虫防鼠:ゴキブリやネズミなど、有害な生物による食品への汚染を防ぎます。
- 二次汚染:調理中・後の食品が設備、器具、人の手で汚染されることです。二次汚染が起こりやすい箇所を特定し、対策を講じる必要があります。
- 異物混入:食品の製造工程で異物が混入しやすい箇所を把握し、対策します。
- 従業員の体調管理:食品製造工程に係る従業員の健康状態を日々確認し、定期的に検便採取等を行います。
- 身だしなみ:従業員の毛髪や異物の食品混入を防ぐために実施します。例として白衣、靴、帽子、マスクなどを清潔に保つことが挙げられます。
- HACCPの知識:食品事業所で特に食品事故につながりやすい工程を把握します。HACCPの重要管理点に関わる従業員は、管理基準・方法を確認し実施します。
従業員への衛生教育の必要性
HACCPに沿った衛生管理において、従業員の衛生教育は必須となります。衛生計画を立てるだけでは、作業現場に定着しないためです。
衛生管理よりも売上や生産性の向上が優先される作業現場では、衛生管理のルールは重視されないことがほとんどです。結果として、異物混入や汚染が起こりやすくなります。
食品事故が起こってから衛生管理を行うのでは意味がありません。従業員の衛生教育を定期的に行い、HACCPに沿った衛生管理が従業員に浸透することが大切です。
衛生管理計画書が標準搭載の
おすすめHACCPシステムをチェック
衛生教育によってHACCPの定着が期待できる
HACCPに沿った衛生教育は、一般衛生管理を充実させ、重要管理点を適切に管理するために役立ちます。前提となる一般衛生管理が不完全な場合、HACCPに沿った衛生管理は成立しません。
食品製造現場には、新人から管理者まで様々な従業員がいます。新人に対する衛生教育や食品事故が起こったときの対応まで、計画を立てましょう。衛生計画では内容、時間、実施方法などを従業員の習熟度に合わせて定めます。
従業員の教育における5ポイント
HACCPに基づく衛生教育を実施するとき、5S活動への理解、記録方法・製造手順の確認、食中毒やアレルゲンについて理解を深めることが大切です。
5S活動への理解
食品衛生5Sは、食品衛生の基本です。5Sを当たり前と考えていますが、内容を正確に理解している人は少ないのが現状です。整理で不要なものを取り除き、必要なものを一目で分かるようにします。清掃は水洗いの洗浄と洗剤による殺菌、微生物レベルの清潔な状態維持が含まれます。
清潔な状態は、従業員の習慣化によって維持します。5S活動を従業員に定着させることで、一般衛生管理のレベルを向上させることができます。
記録方法の確認
HACCPの運用には、温度や湿度をはじめとする記録が必要です。重要管理点だけでなく、一般衛生管理のポイントまで記録します。記載した記録は営業許可更新時に確認され、衛生管理を適切に行っていたことの証拠となります。
記録方法の確認は、HACCPの制度化において重要なポイントです。衛生教育ではまず、従業員が適切な記録付けができるかを確認します。
製造手順の確認
製造手順の確認は、生産性の向上に不可欠です。しかし、作業手順を効率化することで、食品の品質や安全上の問題が発生する可能性があります。従業員が生産性を上げようとするあまりに間違ったやり方が習慣になるからです。
衛生教育の一環として事前に製造手順を確認することで、生産性と品質を両立させる管理につながるでしょう。
CCPへの理解
HACCPのCCP(重要管理点)を管理することは、食品事故を予防するために必須です。HACCPの運用をする際、CCPの管理担当者は、管理方法や基準を理解し、実施できることが重要です。衛生教育の一環として、CCP担当者に対して、管理方法や基準の確認を行いましょう。
食中毒やアレルゲンについて
HACCPは、危害要因を洗い出します。危害要因には、食中毒の微生物(生物学的危害要因)、アレルゲン(化学的危害要因)、金属片など(物理的危害要因)があり、事業所ごとに危害要因を分析します。
それぞれの事業所で危害要因は異なるため、事業所ごとの危害要因を理解しておくことが必要です。食中毒やアレルゲンを防止できるよう、危害要因について教育しましょう。
衛生管理計画書が標準搭載の
おすすめHACCPシステムをチェック
従業員教育の方法
従業員の衛生教育の方法は、大きく分けてOJTとOff-JTがあります。OJTとOff-JTは、それぞれメリットとデメリットがあります。OJTとOff-JTを組み合わせることで適切な衛生教育ができます。
ここではOJTとOff-JTについて詳しく解説します。
OJT
OJTとは現場での教育訓練を指します。OJTのメリットは、教育訓練担当者から個人のペースで指導ができることです。現場で作業方法を学び、即戦力となる従業員を排出できるほか、現場での理解度を確認できます。
OJTのデメリットとしては、教育される従業員の理解度が教育訓練担当者の力量に左右されることが挙げられます。業務への理解が低い場合、作業の進捗状況に影響が出る可能性があります。
OJTのデメリットを補完するのが、次のOff-JTです。
Off-JT
Off-JTは現場を離れて教育訓練の時間を設け、体系的知識を学ぶ方法です。学習方法には座学、Webセミナー、eラーニングなどの方法があります。
座学では体系的知識を学べますが、個人レベルの教育ができません。また、教育側を含む従業員のシフト調整を行う必要が出てきます。
Webセミナーは場所を問わずに学習できますが、受動的な学習となり理解度の確認ができません。そのほかeラーニングは時間や場所の制限がなく、学習の進捗状況を管理できますが、実技の習得には不向きです。
役割に合わせた衛生教育の実施が不可欠
衛生教育は、従業員全員が同じ内容ではなく、役割で内容が異なります。OJTとOff-JTのメリット・デメリットを考え、適切な方法を組み合わせることで適切な衛生教育が可能です。
手洗いや身だしなみなどの一般衛生管理であれば製造工程に関わる従業員へ教育が必要ですが、CCPの管理は担当者による管理方法や管理基準の理解で十分です。衛生教育計画から役割に沿った教育訓練を実施し、HACCPに沿った衛生管理に役立てましょう。
ページ監修:力丸修也
行政書士、JHTC認定HACCPリードインストラクターとJFS監査員研修修了。
HACCPコンサルタントとしては、レトルト食品会社、そうざい業、冷凍食品業者等の実績あり。
あなたの企業に合うシステムは?
おすすめHACCPシステム3選をチェック
おすすめのHACCPシステム3選
Googleで「HACCP システム」「HACCPシステム ツール」と検索してそれぞれ10ページ目までを調査(2023年10月10日時点)。 HACCPシステムの公式サイトが表示された20製品(スマホアプリを除く)の中で、HACCP導入に必須となる「衛生管理計画書作成機能」と、記録の抜け漏れや問題があった時に管理者にお知らせが届く「アラート通知機能」がどちらも搭載されているHACCPシステムを3つご紹介します。
(ライオンハイジーン)
- 衛生管理のプロのノウハウが凝縮
- 約60項目が網羅された衛生管理計画書が標準搭載
- 衛生管理のコンサルも可能
- 衛生管理計画書
- 手順書(マニュアル)
- ダッシュボード
- カスタマイズ
- PDF(帳票)出力
- アラート機能
- ほか
企業におすすめ
(KAMINASHI)
- 点検時の状況を撮影し事故防止
- 音声にも対応するメモ機能
- 外国人労働者向けの多言語化対応
- 衛生管理計画書
- ダッシュボード
- 条件分岐ルール作成
- 音声メモ
- 多言語化機能
- アラート機能
- ほか
(UPR)
- IoT温度管理で自動的に記録
- 開店前・営業中・閉店後のチェックリスト作成可
- 異常時はアラート機能で通知
- 衛生管理計画書
- カスタマイズ
- 帳票出力
- IoT温度管理
- 健康管理
- アラート機能
- ほか