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物流業界が考えるべきHACCPとは
食品製造業のイメージが強いHACCPですが、物流業界でも必要な考え方です。HACCPを導入している例として、冷蔵庫で保管が必要な食品を運搬するケースがあげられます。ここでは、物流業界のHACCPについて詳しく解説しています。
物流業界におけるHACCPとは
HACCPは食品製造から喫食者の食の安全を管理する仕組みです。フードサプライチェーンに関係する物流企業におけるHACCPの実施は、食品事故を予防するために重要です。ただし、食品・食材を取り扱う物流企業のすべてにHACCPが必要になるわけではありません。ここでは、物流業界でHACCPの対象になるケースとならないケースについて考えていきます。
HACCPの対象になるケース
物流業界のHACCPの対象は、温度管理が必要な食品・食材の運搬や保管を行う企業です。食品製造から販売までの間の物流で温度管理の不備があれば、食品事故が発生します。しかし、物流企業のHACCPは重要管理点が基本はないため、一般衛生管理が中心です。物流企業のHACCP構築は難しく考える必要はありません。
HACCPの対象外になるケース
食品・食材の運搬や保管を行う企業でも、HACCPの実施が必須ではないケースがあります。例えば、常温保管の食品・食材を運搬しても食品事故につながる確率は低いため、HACCPの実施は任意です。このような常温管理の食品・食材は、HACCP前提の一般衛生管理を実施します。
品質を劣化させずに輸送する体制の構築を求められる
物流企業がHACCPを実施すると、食品事故の予防だけでなく、食品の品質の維持に役立ちます。物流企業の取引先は、運送や保管の工程でも高い品質管理を希望しており、食品・食材の取引時にHACCPにもとづく衛生管理を求める可能性があります。そのため、食品・食材の安全・品質を維持できる運送・保管体制の構築が大切になるでしょう。
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一般的衛生管理のポイント
物流企業のHACCPの重要管理点は基本的に存在しないため、基本的には温度管理の中心とした一般衛生管理の体制を適切に構築します。物流企業のHACCPの一般衛生管理のポイントについて確認していきましょう。
異物の混入を防ぐ
食品・食材の運送や保管工程で異物が入り込めば、食品事故につながる可能性があります。食品・食材の包装が破れないように取り扱うことは当然ですが、異物が混入する可能性を把握し対策を講じましょう。例えば、窓や出入口などに網戸やフィルターを設置することが考えられます。運送や保管工程の施設・設備を把握し、異物が混入しない環境の構築が重要です。
保管・配送時の温度・湿度管理
食品・食材の運送や保管工程では、食中毒菌を増やさないことが大切です。食中毒菌を増やさないために、運送や保管の温湿度管理を適切に実施します。例えば、運送車両や倉庫の冷蔵・冷凍温度を一定に保ち、定期的に記録。要冷蔵や要冷凍の状態は無菌状態ではなく、仕様書の保管温度以上になれば、食中毒菌が増えてしまうからです。この運送や保管の温湿度管理が物流のHACCPの一般衛生管理で大切なポイントです。
取扱者の衛生管理
運送や保管工程でも取扱者の衛生管理は大切です。食品・食材に取扱者から食中毒菌が付着し、食品事故につながる可能性があります。例えば、ノロウィルスによる食中毒はHACCPでは予防できず、取扱者側が衛生管理を徹底しなくてはいけません。
過去には物流企業の取扱者が原因で発生した食品事故もあります。運送や保管工程の取扱者は直接的に食品製造には携わりませんが、製造者と変わらないレベルでの衛生管理を意識しましょう。
レポートラインの整備
レポートラインとは、指揮命令系統や報告手順・対策のことです。HACCPによる衛生管理では手順書を作成し記録付けを行います。食品安全をマネジメントとして捉え、食品事故を予防し、万が一の事故の被害を最小化することが前提です。各々の企業でレポートラインを整備し、食品事故の被害が広がらないようにしましょう。
従業員の健康管理・体調管理
食中毒の原因は、原材料由来、環境由来、人由来があります。食中毒対策として温度管理や施設・設備を整えても、従業員から食品・食材に食中毒菌が付着する可能性があります。食品・食材の取り扱いに関わる従業員は体調管理を心がけ、体調不良であるならば食品・食材の取り扱いを控えるように取り決めを行いましょう。
倉庫・運搬車輌の清掃
食品衛生5Sは、食品の運搬・保管工程でも大切です。食中毒菌は、運搬車両や倉庫の環境からも付着します。食品衛生5Sの基本は、清掃、洗浄、殺菌です。例えば、リステリアモノサイトゲネスは環境菌といわれ、倉庫と運搬車両の微生物レベルの殺菌が重要です。運搬車両や倉庫の清掃、洗浄、殺菌を定期的に行い、環境由来の食中毒菌が製品に付着しないように心がけましょう。
HACCPに沿った衛生管理の実施事例
物流企業も取引先の要求によって運送・倉庫工程のHACCPを構築することが迫られます。しかし、食品製造業者ではない物流企業がHACCPを実施するのに戸惑いがあるのも事実でしょう。ここでは、物流企業のHACCP導入・運用事例について紹介します。
京豊運輸
関西で食品配送を行う京豊運輸は、HACCP制度化に合わせて、車両の温度管理を中心としたHACCPを導入しました。温度チャートを定期的に確認し、冷凍機の異常を早期に発見し、食品事故の予防に取り組んでいます。また、冷凍コンテナの保管温度は-20℃で管理しています。
ヤマト運輸
物流大手のヤマト運輸は、食品安全マネジメント認証の「FSSC22000」を羽田クロノゲートベースで取得しました。「FSSC22000」認証を取得することで、HACCPの導入・運用に加えて、マネジメント手法が加わります。フードサプライチェーンの物流工程で、厳密な食品安全の仕組みを確立でき、食品事故の予防に取り組んでいます。
IMBSフルフィルメント(物流センター)
IMBSフルフィルメントは、三菱伊勢丹のリソースやノウハウを活用し、通信販売の物流を展開しています。物流企業として食品・食材を取り扱うため、HACCPに取り組んでいます。IMBSフルフィルメントの食品安全の取り組みの特徴は、「賞味期限の管理」「温度管理」「作業の確認」「輸配送の温度管理」「レポートラインの整備」です。
IMBSフルフィルメントのHACCPは、百貨店のリソースやノウハウを活用し、食品・食材の安全だけでなく、品質向上にもつなげています。
記録や管理をできるだけ楽にしたいなら
食品・食材を取り扱う物流企業にも、取引先が要求することがあります。しかし、HACCPは沢山の文書や記録が発生し、仕組みの構築にも労力と時間がかかります。HACCPシステムによる衛生管理の文書・記録を管理することによって、紙による管理と記録を省くことができます。
また、物流企業には食品安全の専門家が存在しないケースもありますが、HACCPシステムを活用することでHACCPを簡単に構築できます。
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ページ監修:力丸修也
行政書士、JHTC認定HACCPリードインストラクターとJFS監査員研修修了。
HACCPコンサルタントとしては、レトルト食品会社、そうざい業、冷凍食品業者等の実績あり。
おすすめのHACCPシステム3選
Googleで「HACCP システム」「HACCPシステム ツール」と検索してそれぞれ10ページ目までを調査(2023年10月10日時点)。 HACCPシステムの公式サイトが表示された20製品(スマホアプリを除く)の中で、HACCP導入に必須となる「衛生管理計画書作成機能」と、記録の抜け漏れや問題があった時に管理者にお知らせが届く「アラート通知機能」がどちらも搭載されているHACCPシステムを3つご紹介します。
(ライオンハイジーン)
- 衛生管理のプロのノウハウが凝縮
- 約60項目が網羅された衛生管理計画書が標準搭載
- 衛生管理のコンサルも可能
- 衛生管理計画書
- 手順書(マニュアル)
- ダッシュボード
- カスタマイズ
- PDF(帳票)出力
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- ほか
企業におすすめ
(KAMINASHI)
- 点検時の状況を撮影し事故防止
- 音声にも対応するメモ機能
- 外国人労働者向けの多言語化対応
- 衛生管理計画書
- ダッシュボード
- 条件分岐ルール作成
- 音声メモ
- 多言語化機能
- アラート機能
- ほか
(UPR)
- IoT温度管理で自動的に記録
- 開店前・営業中・閉店後のチェックリスト作成可
- 異常時はアラート機能で通知
- 衛生管理計画書
- カスタマイズ
- 帳票出力
- IoT温度管理
- 健康管理
- アラート機能
- ほか