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セントラルキッチンで考えるべきHACCPとは

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セントラルキッチンは、複数の店舗や施設ぶんの食事を一か所でまとめて調理する仕組みです。効率やコストの面でメリットがある一方、ひとつの衛生上のミスがそのまま供給先すべてへ広がるという構造的なリスクを抱えています。ここでは、セントラルキッチンで考えるべきHACCPについて分かりやすく解説しています。

セントラルキッチンにおけるHACCPとは

「1施設のミスが全供給先に広がる」前提で危害要因を洗い出す

セントラルキッチンの最大の特徴は、一括大量調理によって被害が大規模化しやすいことです。1店舗の厨房であれば数十人規模で収まるはずのトラブルが、数十店舗・数千食へ一度に波及します。取り扱う食材の種類と量、作業に関わる従業員の数も多く、その分だけ危害要因の数も増えていきます。

また、同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設は、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の適用対象です。HACCPに沿った衛生管理と併せて、このマニュアルが求める水準を満たしているかを確認しておく必要があります。

マニュアルでは、加熱調理食品について中心部が75℃で1分間以上(ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝等は85~90℃で90秒間以上)に達することを求めているほか、原材料および調理済み食品を食品ごとに50g程度ずつ密封し、-20℃以下で2週間以上保存する検食も定めています。原因究明のための検体を残しておくという考え方は、HACCPの記録と地続きのものです。

クックチルの冷却は「30分以内に開始・90分以内に3℃以下」

セントラルキッチンで調理した食品は、その場ですぐ食べられるわけではありません。冷却して保管し、配送してから提供されるまでに1日から数日を要することもあります。この間の温度管理こそが、セントラルキッチンのHACCPの核心です。

大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理後に食品を冷却する場合、30分以内に中心温度を20℃付近まで、または60分以内に10℃付近まで下げ、その後は10℃以下または65℃以上で管理することを求めています。

さらに、医療・福祉施設向けのセントラルキッチンを対象とした手引書では、クックチル方式について75℃・1分間以上の加熱後30分以内に冷却を開始し、冷却開始から90分以内に3℃以下へ到達させる急速冷却、およびその後の3℃以下での冷蔵保管が示されています。大量に仕込むほど中心部の温度は下がりにくくなるため、浅い容器への小分けやブラストチラーの活用など、設備と作業手順の両面で「冷やしきる」設計が求められます。

配送と再加熱まで含めて1本の工程管理にする

セントラルキッチンのHACCPを考えるとき、見落としやすいのが自社の厨房を出た後の工程です。出荷時・納品時の温度確認と記録、配送車の庫内温度の管理、店舗や施設側での保管と再加熱まで含めて、はじめて一連の管理になります。

再加熱については、前述の手引書のなかで、サテライトキッチンでの再加熱を65℃以上とし、スチームコンベクションオーブンや再加熱カート、電子レンジ、湯煎などを使って10~60℃の温度帯を迅速に通過させる方法が示されています。菌が増えやすい温度帯にとどまる時間を短くするという考え方は、加熱でも冷却でも共通です。

加えて、大量調理の現場では交差汚染のリスクも高くなります。汚染作業区域と非汚染作業区域を明確に区別すること、包丁やまな板を用途別・食品別に使い分けること、汚染区域から非汚染区域へ移動する際に手洗いを行うこと、食品と器具の取り扱いを床面から60cm以上の場所で行うことなど、一般衛生管理の徹底がHACCPの土台になります。

セントラルキッチンでの食中毒リスク

セントラルキッチンで食中毒が発生すると、被害が供給先全体に及ぶだけでなく、営業停止によって全店舗・全施設の食事供給が同時に止まります。ここでは、大量調理の現場で実際に起こった食中毒事例を確認します。

セントラルキッチンの食事によるウエルシュ菌食中毒【2021年・埼玉県】

2021年4月、埼玉県羽生市のセントラルキッチンが調理した食事を原因とするウエルシュ菌食中毒が発生しました。喫食者373名のうち93名(男性56名・女性37名、年齢3~81歳)が発症し、原因食品はご飯、豆腐ハンバーグ、カボチャの甘煮、すまし汁とされています。患者28名と従事者1名の便からウエルシュ菌が検出され、施設には3日間の営業停止命令が出されました。

ウエルシュ菌は100℃の加熱にも耐える芽胞をつくるため、通常の加熱調理では死滅しません。大鍋・大釜での調理後は鍋底の酸素が少ない状態になり、この菌にとって増殖しやすい環境が生まれます。加熱後に20~50℃の温度帯へ長くとどめず、速やかに10℃以下へ冷却するか55℃以上で保管することが対策の要です。作り置きが避けられないセントラルキッチンにとって、もっとも注意したい菌のひとつといえます。

学校給食の海藻サラダによる病原大腸菌食中毒【2020年・埼玉県】

2020年6月、埼玉県八潮市で市内全小中学校の給食調理を受託していた事業者の食事により、大規模な食中毒が発生しました。喫食者6,762名に対し、患者数は2,958名。原因食品は6月26日に提供された海藻サラダで、原因物質はastA保有大腸菌O7:H4でした。

調理工程の問題点としては、キャベツ・ニンジン・冷凍コーンは提供当日にボイルしていた一方、カットわかめと海藻ミックスは提供前日に水戻しして冷蔵保管したまま、加熱工程を経ずに使用されていたことが挙げられています。さらに、水戻し後に保管していた冷蔵庫が、作業中の食品の出し入れや扉の開放によって長時間10℃以上になっていたことも指摘されました。

「一部の食材だけ加熱工程を省いていた」「冷蔵庫の実際の温度を把握できていなかった」という、どの現場でも起こり得る抜けが数千人規模の被害につながった事例です。

学校給食による腸管出血性大腸菌O157集団下痢症【1996年・大阪府】

1996年7月、大阪府堺市で学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌O157の集団下痢症が発生しました。患者数は学童・教職員や家族などを含めて9,523名、うち3名が亡くなっており、国内の食中毒事例としても屈指の規模です。当時は自校調理方式でしたが、47校で同時期に発生したことから共通食材が疑われ、特定の生産施設から出荷された貝割れ大根の可能性が高いと発表されました。

この事件を契機に、1997年3月に「大量調理施設衛生管理マニュアル」が制定され、同年4月には学校給食衛生管理の基準も定められています。一括して調達・調理した食材が広範囲へ配られる仕組みでは、上流のわずかな汚染が一気に拡大するという構造は、セントラルキッチンにもそのまま当てはまります。

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記録や管理をできるだけ楽にしたいなら

セントラルキッチンでは、記録すべき項目が工程の数だけ存在します。原材料の受け入れ温度、加熱の中心温度、冷却の開始時刻と到達温度、冷蔵・冷凍庫の温度、出荷時と納品時の温度、配送車の庫内温度、検食の保存、従事者の健康チェックなど、紙の帳票では集計と確認だけで相当な工数がかかります

八潮市の事例のように、冷蔵庫が「設定温度」ではなく「実際に何℃だったか」を把握できていなかったことが被害につながるケースもあります。センサーで温度を自動記録できれば、扉の開閉による温度上昇のような、人が見ていない時間帯の変化にも気付きやすくなるでしょう。

HACCPシステムには、衛生管理計画に沿ったチェック項目をタブレットやスマートフォンから入力できるもの、温度センサーと連携して記録を自動化するもの、基準を外れた際にアラートで知らせるものなどがあります。複数拠点の記録を一元管理できる製品を選べば、セントラルキッチンとサテライト側の状況をまとめて確認しやすくなります。記録が電子的に残ることで、保健所の立入検査や取引先の監査への対応もスムーズになることが期待できるでしょう。

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