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HACCPの認証について

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HACCPの第三者認証の種類とそのメリットについて確認していきましょう。

HACCP認証とは?

自社で導入したHACCPは、HACCPの基準を本当に満たしているのかはわかりません。そのことを解決するのが、HACCPの第三者による認証になります。HACCPの第三者認証では、各々の食品事業者がHACCPを含む食品安全マネジメントの要求事項を満たしているかを審査されます。

HACCPの認証を取得すると、自社が食品安全にしっかりと取り組んでいることを外部に表明することができます。

HACCP認証の種類

業界団体によるHACCP認証

業会団体によるHACCP認証は、それぞれの業界や業種の特徴に合わせてつくられています。例として、「一般社団法人 日本食肉加工協会」や「一般社団法人 日本弁当サービス協会」などが挙げられます。HACCPの衛生管理を取り入れながらもその業界に特化した内容を設けているため、自分の業界・業種に合った認証制度を利用しましょう。

地方自治体によるHACCP認証(地域HACCP)

地方自治体によるHASSP認証では、各自治体が独自に定めた認証制度を用いています。例としては、「北海道HACCP自主管理認証制度」や「大阪版食の安全安心認証制度」などが挙げられます。各自治体の認証制度の内容や基準は各自治体によって異なりますが、中小企業でも認証を得やすく、近隣地域からの信頼を得られるメリットがあります。

民間団体によるHACCP認証

以下の規格は「民間HACCP認証」と位置付けられていますが、実際は「HACCPの食品衛生管理手法をもとにして継続的改善を図るマネジメントシステムの形にした規格」です。そのため実質はただHACCPを遵守するだけでは取得できない認証資格となっています。

ISO22000(食品安全マネジメント)

HACCP認証の種類の代表的なものにISO22000があります。ISO22000はスイスに本社を置く国際標準化機構(ISO)が策定しており、マネジメントシステムとHACCPの要素から成り立っています。多くの国で用いられる国際規格の食品安全マネジメントで、フードサプライチェーンのすべてに対応しています。

主にこのISO22000の認証を受けている食品事業者は、大手食品事業者になります。なぜなら、要求事項が厳しいこともあり、中小食品事業者では対応することが困難であったからです。

FSSC 22000

ISO22000に追加要求事項を加えた、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。腐敗しやすい動物性食品や植物性食品、常温保存品や化学製品といった食品製造業などが対象です。「GFSIベンチマーク規格」を取得できることから、世界中の食品関連企業からの支持を得ることが期待されています。

ISO 9001-HACCP

品質マネジメントシステムである国際規格「ISO 9001」をベースとして、HACCPの考え方を取り込んだ認証制度です。農産業や水産業、畜産業、食品製造・加工業、製造業、外食産業など食品に関する幅広い業種に適用が可能な制度となっています。

「ISO 9001-HACCP」と「ISO 22000」、「FSSC 22000」の違いは?

品質マネジメントプログラムであるISO 9001にHACCPの要素を取り入れたものが「ISO 9001-HACCP」、それにPRP(前提条件プログラム)やO-PRP(オペレーション前提条件プログラム)・回収といった要素も加えたものが「ISO 22000」、さらに追加要求事項を加えたものが「FSSC 22000」となっています。

JFS(日本食品安全マネジメント)

HACCPの認証を取得しやすくするために、HACCP制度化とともに国が進めてきたのが、JFS(食品安全マネジメント)の認証になります。このJFSの認証のよいところは、段階的に認証のレベルを取得できるということになります。

また、JFS-G(フードサービス)分野の規格も発行され、飲食店・そうざい業等のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理にも対応しています。

その他の認証

そのほかにも厚生労働省が認証を行う「総合衛生管理製造過程(通称:マル総)」がありますが、2021年6月のHACCP導入の義務化に伴い、現行の制度は廃止されることが決定しています。

HACCP認証のメリット

HACCPの認証を取得するメリットは、自社の食品安全に関する取組を外部に示すことができることになります。製品説明書にHACCP認証で食品安全を管理していることを示すことで、販路の拡大につながることもあります。

また、HACCP認証取得をCSR(企業の社会的責任)の一環として、一般消費者に示し、企業としての信頼を勝ち取ることも考えられます。このような認証取得は、新規の販路開拓等を除き、すぐには効果が見えることはありませんが、CSRの取り組みとして中長期的に企業の価値を高めていきます。

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HACCP認証取得にかかる時間

HACCP認証取得にかかる時間は、各々の事業所の食品安全の取り組みをどの程度行っているのか、また、認証の種類により変わってきます。一般的な食品製造事業所の場合おおよそ1年間でHACCP導入から認証取得まで行えると想定しておくのをおすすめします。

HACCP認証を取得するまでの流れ

事前準備

HACCP認証を取得するにあたって、HACCPチームの編成や製造工程一覧図の作成、危害要因の分析、重要管理点(CCP)の決定運営などHACCP導入のための7原則12手順にのっとったHACCPプランを構築しましょう。専門のコンサル会社に相談することで、認証取得に向けてスケジュールや書類の作成をサポートしてもらえます。

HACCPプランを構築したら、プランに沿って運用していきます。認証審査を受けるには、運用期間が通常3ヶ月以上は必要です。HACCPプランをどのように構築・運用したかの記録は残しておかないといけないため、記録方法や管理方法についても検討しておきましょう。

審査

審査機関による審査を通るためにも、コンサルティングに事前審査してもらい、指摘された事項の是正処置・改善に取り組むことをおすすめします。審査機関による本審査では文書や現場のチェックが行われ、文書化した手順が正しく実施されているか運用状況を確認。審査で問題がなければ審査委員会で登録決定会議にかけられますが、問題があれば指摘事項の是正処置・改善が必要です。

認証取得

登録委員会による会議で審査に無事通れば、HACCP認証の取得が認められ、登録証が発行されます。認証取得後も、HACCPプランが継続されているか、有効性が保たれているのか、サーベイランス審査(継続審査)や更新審査を受ける必要があります。

各認証における審査・認定にかかる費用

総合衛生管理HACCP認証

総合衛生管理 HACCP認証(CODEX-HACCP)の認証取得に取り組むことで、製品の品質・安全性の確保や従業員の意識向上、製品ロスやクレームの削減などの効果を期待できます。衛生管理を徹底している事業者としてのアピールにも使え、取引先や消費者からの信頼度アップにも貢献。また、安心・安全な製品を製造するための仕組みを構築することで、従業員の勘に頼らない製造体制を整えることができます。

新調理HACCP認証

素材を生かす新しい調理法として注目されている「50℃洗い」「70℃蒸し」「真空低温調理法」などに対し、衛生的な調理を行えるようにシステムを管理するのが新調理HACCP認証です。たとえば50℃洗いでは水洗いでは落ちにくい野菜の表面の汚れや虫を落としやすくなるほか、酸化防止や細菌の増殖抑制などの効果を期待できるとのこと。そのほかにも、野菜がみずみずしくなったり肉・魚の生臭さや酸化物がとれておいしくなったりなど、衛生面・調理面においてさまざまなメリットを得られるのがポイントです。

小規模施設HACCP認証(レストランHACCP)

小規模施設HACCP認証は、飲食店や食品製造施設を対象としたHACCP認証です。食中毒の発生率のうち60%以上を飲食店が占めていることから、飲食店や食品製造施設における事故の軽減や衛生管理の標準化を目的に設けられた経緯があります。小規模施設HACCP認証を取得すると認証マークを施設に掲げることができ、食の安心・安全に取り組んでいる施設としてのアピールに使えます。

HACCPマークとは

厚生労働大臣が承認したHACCP導入の工場で製造した食品には「HACCPマーク」を表示することが可能です。「HACCPマーク」を表示できれば、HACCPの客観的評価や衛生管理の適切性を示せ、衛生管理の差別化につながります。

厚生労働大臣が承認する「総合衛生管理過程」は令和2年6月に廃止され、JFS規格(食品安全マネジメント協会)を国は現在すすめています。JFS規格は食品衛生法改正に対応しており、食品事業者のHACCP認証にも活用できます。

各自治体のHACCP認証

HACCP認証には、自治体ごとの認証制度が存在しています。食品衛生は地方自治体の保健所が担当しているため、地域によって営業許可更新の年数が異なることも知っておきましょう。HACCPにもとづいた衛生管理がされているかも地方自治体の保健所が調査し、基準をみたしていれば認証されます。

例えば、大阪は一般衛生管理が中心の「大阪版食の安全安心認証制度」を実施しています。ただし一般衛生管理がメインの場合、12手順7原則を行う「HACCPに基づく衛生管理」の実施を完全に確認することはできません。

また、埼玉県は「彩の国ハサップ」という認証制度を設けています。「彩の国ハサップ」は一般衛生管理だけでなく「HACCPに沿った衛生管理」の認証も推進しており、認証企業には「①埼玉県のホームページで施設名の公表」「②店頭での確認済票の掲示」「③製品にマーク・ロゴの使用」といったメリットがあります。

各自治体のHACCP認証は地域振興などの目的で制度が存在するケースもあり、地域によって定める認証基準やチェック内容が異なります。これから見直される可能性もあり、地方自治体のHACCP認証を取得しようと考えているのであれば今後の動きも注視する必要があるでしょう。

まとめ

HACCP認証は、さまざまなものがありますが、国が進めているJFS(食品安全マネジメント)は、食品衛生法のHACCPに沿った衛生管理にも相性が良く、取り組みやすいものとなっています。HACCP認証を取得すると、取引先の拡大、CSR(企業の社会的責任)の一環としての企業価値の向上につながります。

また、食品安全に力を入れることは、顧客からの評価にもつながり、衛生的な店舗を好む集客にも影響してくるでしょう。このように、HACCP認証はさまざまな用途に活用できるといえます。

ページ監修:力丸修也
行政書士、JHTC認定HACCPリードインストラクターとJFS監査員研修修了。
HACCPコンサルタントとしては、レトルト食品会社、そうざい業、冷凍食品業者等の実績あり。

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